1.調査の手法について :::日本産切り花輸出における輸送方法標準化実証調査

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(1) 実証調査の前提について

(1) 実証調査の前提について

現在の日本産切り花輸出で必要となる輸出用の梱包は、①生産者による輸出梱包、②フォワーダーや輸出業者によるリパック、③卸・仲卸によるリパックの3パターンに大きく分けられる。今回、調査を実施するに当たっては、多品目・小ロットの注文に対応できる、③卸・仲卸によるリパックを前提として行われた。

(2) 想定先の仕向け地の設定について

(2) 想定先の仕向け地の設定について

日本産切り花の仕向け地を大きく①近距離(近隣アジア諸国等)、②遠距離(欧米等)を想定し、今回の実証調査に当たって、それぞれ①香港、②アメリカ・ニューヨークを設定した航空便による温度変化のシミュレーションを実施した。これらの国は、多品目・小ロットの注文が多いと想定される仕向け地である。
また、あわせて近隣アジア諸国(香港)への海上便による輸送シミュレーションも実施し、その効用性を検証した。

(3) 実施期間について

(3) 実施期間について

shiken_sche.gif

(4) シミュレーションの方法について

(4) シミュレーションの方法について

 実際に輸出が行われている事業者から聞き取りを行い、その行程と温度環境を整理し、温度変化の行程表を作成した。(詳細は、概要編を参照)
また、温度変化の再現に当たっては、温度設定が可能な保冷トラックを使用した。なお、同保冷トラックは、加温の仕組みがなかったため、冬期の調査に当たっては、園芸用の電気暖房器具を用いて香港の高温環境を再現した。
 シミュレーションは、(ア)入り数、(イ)保水(乾式・湿式)によるパターン別に行い、品目によっては(ウ)予冷方法(強制通風予冷、差圧通風予冷)による比較も行った。差圧通風予冷は、掃除機を使用して、差圧環境を再現して実施した。
なお、それぞれは品目ごとに梱包をしているが、一部、様々なものを混ぜ合わせた混載パターンも行なった。

truck.jpg▲使用した保冷トラック 
truck_inside.jpg▲保冷トラック内の様子

(ア) 入り数について

 入り本数の選定については、すでに輸出実績のある業者等から聞き取りをもとに、適切な入り本数を想定し、それを比較した。また、別の判断基準として、内容物の総重量概算を示した。これは、1束当たりの平均重量と入り束数をかけあわせて算定したものである。

(イ) 予冷の方法について

 予冷方法は、強制通風予冷を基本として行った。また、一部品目(スプレーバラ、リンドウ)については、差圧通風予冷も同時に行い、この効果を比較した。

(ウ) 保水条件について

  保水条件は、乾式、湿式(保水ゼリー)の2パターンで比較を行った。また、乾式と湿式での日持ち試験の結果を比較し、差があまり見られないもので、通常国内流通で一般的に保水ゼリーがつけられているものは、作業効率を考慮して、そのまま付け替えなしでの試験も行った。
また、保水資材の比較として、保水シートでの実験も行い、その効果を検証した。

(エ) 日持ち日数について

シミュレーション後は、大田花き花の生活研究所(東京都大田区)に依頼し、花持ち試験を実施した。その施設にて日持ちテストを依頼することにより、客観的な日持ちテストを実施した。試験に当たっては、1試験区当たり5本の日持ち試験を行い、この平均日数を日持ち日数として表した。

日持ち試験場所:大田花き花持ち試験室
 <場所の条件について>
      温度:25℃
      湿度:60~80%
      日長:1500~2000Lux/12時間(6~18時)
   花持ち試験中の用水:クリザール(所定の倍率で希釈したもの)
   観察・記録:一日おきに観察・写真撮影を実施。

(オ) 梱包具合について

今回の試験における本数による梱包具合については、参考までに以下のマークで表した。ただし、日持ち試験の結果は、様々な要因がこの他にもあるので、これと必ずしも一致しない。

梱包できるが、詰め過ぎで、品質の著しい低下を防げない状態。
余裕がかなりあり、梱包本数が足りない状態。
今回行った梱包方法のなかで、一番最適な入り本数と考えられるもの。
少し余裕があり梱包効率が下がるが、ゆったりと梱包ができ、高品質の維持が可能。
梱包効率が一番良いが、少し詰め過ぎで、1~2束減らした方が良いと考えられるもの。

 なお、航空便のシミュレーションでは、入り数を多くするため束ごとに新聞紙で絞り込んで圧縮梱包を行ったが、船便では、絞り込みをせずに軽く新聞紙にくるんで梱包した。

(5) 梱包用の段ボールについて

(5) 梱包用の段ボールについて

今回の調査に当たっては、容量重量15kgボックス(=標準(小)ボックス)を使用した。サイズは以下のとおりである。

■ 標準(小)ボックスのサイズ
110×40×H20cm
(容積重量 15kg箱)

(6) 本調査結果を参照する上での注意点

(6) 本調査結果を参照する上での注意点

 本結果は、今回の調査を行った際に得られた数値等であり、季節、気候、梱包場所、産地、品種等の様々な要因により、変化するものと考えられ、すべてのケースに適用できるものではないが、今後、輸出を行う際の判断基準とし参考にしていただきたい。