1.現状と課題について :::日本産切り花輸出における輸送方法標準化実証調査

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(1) なぜ切り花輸出か?

(1) なぜ切り花輸出か?

 我が国の花き産業が販売戦略を考える上で最も欠落している視点は,シェアーする市場規模を全体として大きくすることであり、そこでのキーワードは国際性である。マーケットは我々のまわりで成長をつづけている。韓国、台湾、中国、東南アジア諸国の花き市場の潜在力は大きい。花が嗜好品であり,贅沢品である以上,特級品が二級品より優位であることは間違いなく、我が国からの切り花輸出は,世界一高い切り花を売るという困難さはあるものの、閉塞した産業規模を大きくする唯一の方法であるように思える。 

(京都大学大学院 土井元章教授「切り花鮮度保持マニュアル(1997年)」より要約)

日本から出る矢印がないのは花き産業として正常か?

worldmarket.jpg世界の花き市場と市場圏(土井元章氏 原図)

(2) 日本産切り花輸出の現状について

(2) 日本産切り花輸出の現状について

 我が国では、日本人が本来もつ自然観や豊かな自然と四季折々の気候により、花きの種類は、世界で最も多様性に富んでいる。商業的に流通している花きの品種は4万種にものぼり、毎年3~4千種もの新しい品種が花き市場に導入されている。生産・育種技術においても、世界で高い評価を得ており、近年の経済成長が著しい近隣アジア諸国を始め、日本産花きに対する期待は世界的に高まってきている。

 しかし、花き類の輸出総額(約50億円)の内訳を見ると、植木・盆栽・鉢物類が8割以上を占め、切り花類はわずか2%しかない。切り花輸出の成功例を挙げるとすると、オランダ向けのリンドウ(岩手県安代)が上げられるが、これに追随する事例がなかなか出てなかった。

輸出金額の推移(単位:百万円、%)

yushutsu.jpg (出所:財務省貿易統計より作成)

 このようなことから、平成19年度みなぎる輸出活力誘発委託事業(花きの輸出促進)報告書」(受託者:(財)日本花普及センター)で取りまとめられた戦略等を元に、卸・仲卸を中心としたグループ(アジア花き輸出拡大協議会、日本花き国際化推進協議会、全国日本生花輸出振興協議会)による取り組みが平成20年度よりようやくスタートした。これは、日本やオランダ以外の有能な卸売市場機能を持たないマーケットにおいて、多品目・小ロットの注文に対応する形で卸・仲卸が主体となって取り組まれている。この卸・仲卸が中心となった取り組みは、多産地を取りまとめ、多品目・小ロットの細かい注文に対応でき、日本産花きの特性である「多様性」も生かせるというメリットがある。


卸・仲卸が主体となって取組んでいる輸出の事例

torikumi.jpg卸・仲卸が主体となって取組んでいる輸出の事例
※いずれも農林水産物等輸出促進支援事業(補助事業)を活用

(3) 世界の花きマーケットの分類とその特徴

(3) 世界の花きマーケットの分類とその特徴

 これまでの切り花輸出の実績は、オランダ向けのリンドウ(岩手県安代市)が、最大で唯一の成功例である。この事例は、大ロット・単一品目の出荷というケースであり、これにより航空運賃や手数料を比較的低く抑えることができ、現地での競争力が維持されている。これは、単品目・大ロットの確保ができるというリンドウの生産体制だけでなく、ヨーロッパ市場の流通拠点であるオランダ(Flora Holland)から、ヨーロッパ市場一円に流通されていくという巨大な受け皿があるからこそ可能となるスタイルである。これを他の品目に当てはめようとしても、そもそも我が国の切り花生産者の生産規模は零細であるため、1産地だけではロットの確保が難しい。また、欧州以外の国々で卸売市場が確立できているところが少ないため、受け皿が小さく現地でロットが捌けない。
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 このように世界の切り花マーケットの需要を大きく分類すると、①単品・大量型の需要、②多品目・少量型の需要に分けられ、取り組み方も違ってくる。そして、我が国の切り花の生産体系を勘案すると、マーケットとしては②の方がよりターゲットにしやすいと考えられる。

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(4) 日本産切り花輸出における課題

(4) 日本産切り花輸出における課題

 このような需要の形態により分類することができるものの、共通して①鮮度保持の問題と②輸送コストの削減について課題がある。
 鮮度保持については、国内流通では長年多くの取り組みがされ、改良を積み重ねてきている。しかし、輸出における鮮度保持については、全くノウハウもないため、国内流通で培った鮮度保持技術をもとに改良をしていく必要がある。
 一方で、割高な輸送コストが起因して、現地での許容範囲を超える単価となってしまっている。この日本産品のメリットを帳消しにしてしまう「割高感」が、どの国においても日本産花きの導入のネックになっている。
 今後は、各国のマーケットリサーチ等をもとに、日本産切り花に求められるポイントを押さえながら、これらの課題を解決していかなければならない。

kadai.gif

メリット
超高品質である
多様である
季節感がある
デメリット
高価である(原価+輸送コスト)
生産規模が小さい

日本産切り花に求められるもの

◆外国産の切り花にはないものが期待される
 品目・品種(色、型・・・・)
 品質(2級品はダメ!)
 日本ブランドという主張
◆価格に見合うだけの用途とパーフォーマンス
◆最低5日〜1週間程度の日持ち