3.輸送コストの改善に関する取り組み :::日本産切り花輸出における輸送方法標準化実証調査

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(1) 輸送コストの削減の必要性について

(1) 輸送コストの削減の必要性について

 日本産花き輸出について、各種コストの低減を図ることが求められる。このコストのうち、輸送コスト(航空運賃)の割合が高く、これをいかに低く抑えるかが重要なポイントとなる。
 輸送コストについては、使用する航空会社や、搭載機の種類(旅客機、貨物機)によっても運賃が異なるので、これらの選択の仕方も影響を受けるが、梱包方法の改善がまず有効であると考えられる。
 なぜなら、航空便の運賃計算は実重量もしくは容積重量の大きい指標を用いて計算され、植物である切り花の実重量の容積重量を上回ることがなく、いかに梱包効率を上げるかということが輸送コストの低減に直結するためである。単純に同じサイズのボックスに1本でも多くの切り花が梱包できれば輸送単価は削減される。

(注)容積重量換算率: 6,000cm3 =1kg 
IATA(国際航空運送協会)のルールに基づき、通常、重量に応じて運賃が設定されているところ、軽量だが容積が大きい貨物については、上記のIATAの容積重量換算率に基づき貨物の容積が重量に換算される。これを「容積重量」という。

 一方で、ただ単に多くすれば良いということではなく、日本産花きの品質を損なわないための限界を見出すことが必要である。また、切り花の鮮度維持を図るうえで、梱包箱内の温度変化や水不足等による鮮度低下の要因を減らしていく努力が必要となる。

(2) 梱包用ボックスの選定について

(2) 梱包用ボックスの選定について

① 多品目・小ロットの梱包における梱包用ボックスのパターン化の必要性について

海外に輸出をするとなると、バイヤーに提示する単価を伝えるため、前もって商品情報を確定する必要が生じる。これは、輸送コストが1本当たりの単価に大きく影響を与えるためで、これには1箱当たりの梱包本数がわからなければ算出できない。これは、単一品目・単一産地のものを送る場合は、全く問題ではないが、多品目・小ロット・多産地を取りまとめて輸出する場合は、非常に繁雑な作業となる。そもそも我が国の切り花の流通形態は、品目や産地ごとに種々様々なサイズの規格やそれにあわせた箱サイズが無数に混在していることが主な要因である。これは、国内の卸売市場等で短時間での現品取引を前提としていれば、さほど問題にはならなかったが、日本産切り花を輸出する際には、非常に大きな弊害となっている。
そこで、いかにしてこの作業を簡略化するかが、日本産切り花輸出の大きな課題であるが、現在これを改善するために、可能な限り梱包用のボックスをパターン化する取り組みが各事業者で行われている。これは、数パターンのリパック用の箱を作っておいて、品目・産地・季節ごとに、同一の箱に何本入れることができるかということを算出する「箱に花をあわせる」という手法である。

② 多品目・小ロットの梱包の標準ボックス

現在、採用されているリパック用標準ボックスサイズは以下のとおりである。ここでは、今のところ各社共通で使用しているサイズであるので、多品目・小ロットにおける標準ボックスという位置づけになる。なお、将来的に多品目・小ロットの梱包の注文が多くまとまるようになれば、次項③にあるような、パレットサイズから割り戻したサイズにすることが望ましい。

<標準ボックスのサイズに関する概念>
 容積重量15kg用:小サイズ110×40×H20cm(長さ100cmに対応)
 容積重量20kg用:中サイズ130×40×H23cm(長さ120cmに対応)
 容積重量25kg用:大サイズ149×40×H25cm(長さ150cmに対応)

<段ボール展開図:片面(概略)(単位:mm)>
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③ 単一品目・大ロットの梱包ボックスの選定について

 単一品目・大ロットの注文がコンスタントが期待でき、パレット単位での輸送が可能となる場合、使用する段ボール箱の選定に当たっては、パレットに無駄なく搭載することで、更に輸送コストを下げることができる。これを行う際は、梱包ボックスを、掲載用パレットサイズから割り戻して算定したサイズにすると、パレット上の無駄なデットスペースをなくすことができる。現在行なわれているオランダ向けリンドウの箱サイズは、100×24×17.5cmで、最大243箱の搭載が可能である。
 航空便に搭載するパレットのサイズの標準は以下のとおり。

<パレットの一般的に搭載可能なサイズ>
300×225×160(H)cm
パレットそのもののサイズは
302×228×163cm(125×96×64 inch)だが、パレットに貨物を載せた後にビニールシートやネットをかけるので上記のサイズとなる。

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④ 段ボールの種類について

(ア) 段ボールの形状について

段ボールの形状は様々なタイプに分けられるが、主要なタイプは、以下のとおりである。

① 0201タイプ(旧A式タイプ)

段ボール箱の一般的なタイプでみかん箱タイプと呼ばれるもの。低価格で、国内流通の切り花用段ボールで多く使用されている。なお、観音開きは、衝撃により、箱フタが内側に折れ込みやすく、痛みの原因になる場合もある。この場合、片側もしくは両方のフタをとめる位置を反対側の端にくるようにフタの長さを調整する等の工夫が必要である。なお、これは今回使用した標準ボックスでも同じ仕組みが用いられている。  
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② 0501タイプ(旧B式タイプ)

 差込みがあるタイプのこと。箱の開閉が便利で、比較的重量の軽いものに使用される。
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③ 0301タイプ(旧C式タイプ)

ギフトボックス等に使用されている身とフタに分かれているタイプ。底が抜けないため安心。オランダの切り花流通では、このタイプが多く利用されているが、日本では、切り花用の大きなサイズの大きさに対応できる四隅の張り合わせる機械が一般的でないため、この作業を自前で行なう必要があり、手間がかかる。
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(イ) 底面のとめ方(ロック式)について

底面の組み上げ方法が工夫されてテープが必要ないものはロック式と呼ばれ、以下のタイプに代表される。

① ワンタッチ底タイプ

 底面を組み上げる手間が不用で、箱を立ち上げると自動的に底面が組みあがるタイプ。組み立てる時間が短縮でき、ロットが大きいときに最適。コストがかかる。

② アメリカンロック タイプ

 箱を起こすとき、底の4枚の足を組みながら底を組む。構造が簡単で安価に加工できるが、重いものであると底抜けする可能性もある。底の中心部に力がかかると特に弱い。

(3) 圧縮梱包に関する基本的な考え方

(3) 圧縮梱包に関する基本的な考え方

①  新聞紙による絞込みの必要性

 通常日本国内で流通する切り花は、痛みを与えないことを考慮して、余裕をもった梱包がされている。しかし、この状態で国外へ輸出するには航空運賃を無駄にかけてしまうこととなるので、できるだけ詰めこんで梱包する必要がある。
効率の良い圧縮梱包には、まず1束ずつ、新聞紙等で絞り込みを行う。この絞込みを行わないで、箱へ梱包をしようとしても、束数を多く入れることがまずできないうえ、無理に詰め込んでしまうことになり、花が痛みやすい。
 また、今回の実証テストを行なった結果、品目の形態により、絞り込みしやすさを以下のように区分した。なお、実際にこれを行なう際は、花の形状により個別で判断を行なう必要がある。
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② 新聞紙による絞込み方法

新聞の巻きこみ方法について、様々な方法が考えられるが、現行行われている巻き方として最も痛み方の少ないまき方として、以下の手順を例にあげ紹介することとする。
通常、花を巻く場合は、巻きあがった上体が逆円錐状になるのが通常であるが、以下の巻き方は筒状になる。新聞を巻く際に、花の束全体に力が分散しながら圧縮できるように絞りこむのが特徴である。
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makikata_jituens.jpg (ポイント)
 片手で新聞の端を押さえ、反対側の手で新聞を滑らせながら絞り込む。手で花を押すのではなくて、新聞が花を押していくイメージ。
 これにより、まんべんなく圧力がかかり、比較的痛みが軽減できる。


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(4) 梱包時の効果的な配列方法について

(4) 梱包時の効果的な配列方法について

 現在取組みが行われている事例で、様々な配列方法が行われているが、最も分かりやすい方法として、以下の方法を例に挙げ紹介する。

(ア) ロングステムの場合 (バラ、グロリオサ、トルコギキョウ等)

◆ 下段(1段目)の詰め方

詰め合わせる際交互に配列し、束どうしが固定するようにきっちりと固める。横幅いっぱいつめて、スペースを消すことで横滑りを防ぐ。

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◆ 上段(2段目以降)のつめ方

下段(1段目)の束と束との間にステムの根元から差し込みながら、お互いを固定していく。
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(イ) ショートステムの場合(スイトピー、オキシペタラム等)

◆ 下段(1段目)のつめ方

ステムが短い場合でも、下段は花は外側に向け、配列する。
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◆ 上段(2段目以降)のつめ方

2段目は、中央スペースを埋めるイメージで。茎の向きは内側に向ける。1段目の間に入れ込んでいく。
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